特集 ─ 平成6年

1994

確変フルスペックの原型が、
この年うまれた。

6月27日深夜、長野県松本市の住宅街に猛毒ガスが撒かれた。松本サリン事件——7人が死亡し (のちに後遺症で亡くなった1人を含めれば8人)、約600人が被害を受けた。この事件が、 翌年の地下鉄サリン事件の前触れだったことに、まだ誰も気づいていなかった。 それでもホールの中には、新しい熱狂が生まれていた。平和が発売した『CR黄門ちゃま2』は、 「1/3で確変に突入し、その後2回ループする」という、のちに長く業界標準になる“フルスペック”の 原型をいち早く搭載し、全国で約46万台という驚異的な規模で設置されていく。街ではMr.Childrenの 「innocent world」が流れ、9月には関西国際空港が開港、オリックスのイチローがシーズン210安打 という日本新記録を打ち立てた。そして年の暮れ、11月22日にセガサターン、12月3日には プレイステーションが相次いで発売される。まだ誰も知らない“次世代機戦争”の号砲は、 この年すでに鳴らされていた。

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第一章

確変フルスペックの原型が生まれた年

1994年のホールは、まだ「CR機」がようやく広がり始めたばかりの時代だった。 そんな中、平和が放った『CR黄門ちゃま2』は、のちに長く業界標準になる “フルスペック”仕様——確率変動に1/3で突入し、その後2回ループするという仕組み——の 原型をいち早く搭載した一台だった。全国での設置台数は約46万台という驚異的な規模に達し、 女性ファンを含むプレイヤー層の拡大にもつながっていく。

同じ年、ニューギンの『セブンショック』は、業界でもほぼ初めてとなる “ベルト式”のドラム表示を採用したデジパチとして登場した。確変も連チャンも時短も持たない ノーマル機でありながら、赤・紺・水色・緑・ピンク・金・青・銀・黄と9色に塗り分けられた 7図柄の意匠が目を引いた。パチスロでは、北電子が満を持して同社初の4号機 『クリエーター7』を8月に投入。3リール停止後にフラグ成立を知らせるランプが光る “完全告知”機で、のちの『ジャグラー』シリーズにつながる原型のひとつとして知られている。

「1/3で確変に突入し、その後2回ループする」——
のちに何年も業界標準になる仕組みが、この年すでに完成していた。
第二章

ホールの中で、世の中で

🎰 ホールの中
🗾 世の中
月不明
CR黄門ちゃま2(平和)——確変フルスペックの原型/セブンショック(ニューギン)——ベルト式ドラム表示の意欲作
2月
ノイジーロボ、フィーバーメタルボルカノ、マスカレード(SANKYO)
4月
フィーバービューティフル(SANKYO)
4月発売の『週刊少年ジャンプ』19号から『るろうに剣心』連載スタート
5月
ポールポジション(SANKYO)
6月
サンライズ、ジルバ、フィーバーUFO、フィーバーファンタジー(SANKYO)
1日、Mr.Children「innocent world」発売/27日深夜、松本サリン事件
7月
フィーバーファイター(SANKYO)——業界に先駆けて6インチCRTモニターを搭載
21日、篠原涼子 with t.komuro「恋しさとせつなさと心強さと」発売
8月
クリエーター7(北電子)——同社初の4号機、完全告知
9月
力士I、ソンブレロ、フィーバーキャッスル、フィーバーワールド、フィーバーネプチューン、フィーバーウォーズ(SANKYO)
関西国際空港開港
10月
オリックス・イチロー、シーズン210安打の日本新記録/大江健三郎、ノーベル文学賞受賞
11月
フィーバーバニーガールズ、フィーバーニュートロンD、トリプルランドD(SANKYO)
22日、セガサターン発売(44,800円)
12月
雅D(SANKYO)
3日、プレイステーション発売(39,800円)
通年
流行語大賞は「すったもんだがありました」。ドラマ『家なき子』(37.2%)で「同情するならカネをくれ」も話題に
第三章

この年の音 ── 1994年 年間シングルTOP10

innocent world のサムネイル

innocent world / Mr.Children ── 年間1位・193.6万枚。6月1日発売、5thシングル。Mr.Children初のオリコン1位で、この年の日本レコード大賞も受賞した。

ロマンスの神様 のサムネイル

ロマンスの神様 / 広瀬香美 ── 年間2位・174.9万枚。発売は1993年12月だが94年に入ってロングセラーとなった。スキー用品店『アルペン』のCMソングとしてお茶の間に浸透した。

恋しさとせつなさと心強さと のサムネイル

恋しさと せつなさと 心強さと / 篠原涼子 with t.komuro ── 年間3位・202.1万枚。7月21日発売。映画『ストリートファイターII MOVIE』主題歌。実売枚数は1位・2位を上回っていたがオリコン集計の都合で年間3位。女性ソロ初の200万枚超えを記録した。

Don't Leave Me のサムネイル

Don't Leave Me / B'z ── 年間4位・144.4万枚。2月9日発売、B'zの14thシングル。

空と君のあいだに のサムネイル

空と君のあいだに/ファイト! / 中島みゆき ── 年間5位・146.6万枚。5月14日にオリコン1位を獲得。日本テレビ系ドラマ『家なき子』主題歌で、犬の視点から歌われた歌詞でも知られる。

Hello, my friend のサムネイル

Hello, my friend / 松任谷由実 ── 年間6位・135万枚超。7月27日発売、25thシングル。フジテレビ系ドラマ『君といた夏』主題歌で、発売初週にオリコン1位を獲得した。

survival dAnce のサムネイル

survival dAnce ~no no cry more~ / trf ── 年間7位・ミリオンセラー。小室哲哉プロデュース。trfとしてオリコン1位とミリオンセラーを達成した記念碑的な一曲で、以後の“小室ブーム”の起点になった。

世界が終るまでは… のサムネイル

世界が終るまでは… / WANDS ── 年間10位・122.1万枚。6月8日発売、WANDS最後のミリオンセラー。アニメ『SLAM DUNK』エンディングテーマ。動画はWANDS公式チャンネルにある後年の“第5期ver.”リメイクMV。

動画はYouTubeの公開プレイヤーをそのまま埋め込んでいます。再生できない場合は動画側の設定によるものです。

第四章

この年の台

実機の写真は使えないため、当時の実戦動画・解説動画への入口として、YouTube公式のサムネイルを表示しています(対応する動画があるものだけ)。

CR黄門ちゃま2の動画 パチンコ ─ CR機

CR黄門ちゃま2

平和

確率変動に「1/3で突入し、その後2回ループする」という、のちに長く業界標準となる“旧基準フルスペック”の原型を確立した一台。全国で約46万台という驚異的な台数が設置され、女性ファンを含むプレイヤー層の拡大にもつながった。

セブンショックの動画 パチンコ

セブンショック

ニューギン

業界でもほぼ初めてとなる“ベルト式”のドラム表示を採用したデジパチ。確変も連チャンも時短も無いノーマル機ながら、赤・紺・水色・緑・ピンク・金・青・銀・黄と9色に塗り分けられた7図柄の意匠が目を引いた。

クリエーター7の動画 パチスロ ─ 4号機

クリエーター7

北電子(8月)

北電子が満を持して投入した同社初の4号機。3リール停止後にフラグ成立を知らせるランプが光る“完全告知”機で、のちの『ジャグラー』シリーズにつながる原型のひとつとして知られる。

フィーバーファイターの動画 パチンコ

フィーバーファイター

SANKYO(7月)

業界に先駆けて表示部に6インチのCRTモニターを搭載した記念碑的な一台。実写の女性映像を使った演出が当時大きな話題になった。SANKYO公式チャンネルの「もう一度打ちたい!」シリーズで振り返られている。

フィーバーキャッスルの動画 パチンコ

フィーバーキャッスル

SANKYO(9月)

確率1/215のデジパチ。SANKYO公式チャンネルの「もう一度打ちたい!」シリーズで振り返られている一台。

パチンコ ─ 羽根モノ

力士I

SANKYO(9月)

中央役物に、盃を持った力士の人形がでんと構える貯留式羽根モノ。左右の肩の「START」チャッカーに玉が入ると電動役物が開く仕組みで、同時発売のCR力士Iは最大15ラウンドまで続いた。

パチンコ ─ 権利物

ポールポジション

SANKYO(5月)

盤面中央にレーシングカーを模した役物を据えた2ラウンド機。玉がセンターチャッカーを通過すると2桁のデジタルが回転し、3・5・7のいずれかで揃うと大当り。この機構は後継機『サーキットウルフ』にも受け継がれた。

パチンコ

フィーバービューティフル

SANKYO(4月)

『フィーバーパワフル』シリーズの後継機。業界初とされる、4ライン同時にリーチがかかる“フォースリーチ”を搭載。夢夢ちゃんが大人びた姿に変身する演出も話題になった。

パチンコ ─ 普通機

サンライズ

SANKYO(6月)

一見地味だが、10個まで玉を呼び込む新型チューリップを搭載した普通機。中央のチャンスポケットに入賞すると開く仕組みで、左右の肩チューリップから玉が連鎖的に増えていく設計が凝っていた。

パチンコ ─ 羽根モノ

ノイジーロボ

SANKYO(2月)

中央役物にロボットが陣取る貯留式羽根モノ。大当り時にロボットの両腕が開閉し、そのタイミングで玉を役物に誘導できるかどうかがそのまま出玉を左右する、独特の緊張感を持つ一台だった。

パチンコ

フィーバーメタルボルカノ

SANKYO(2月)

火山噴火をモチーフにしたデジパチ。表示部そのものがモーターで動く仕掛けを持ち、リーチ中にデジタルが回転したり前後に動いたりと激しく動作する演出が特徴だった。

サムネイルはYouTube公式が提供する画像です。クリックすると各動画のページが開きます。

ほか12機種。 1994年の全機種を年表で見る →

第五章

あの頃の空気 ── ポケベルと少年ジャンプ

この年の新語・流行語大賞は、宮沢りえが出演したタカラ「canチューハイ」のCMから生まれた 「すったもんだがありました」。同じ年のトップテンには、日本テレビ系ドラマ『家なき子』で 安達祐実が発した「同情するならカネをくれ」も選ばれている。37.2%という驚異的な視聴率を 記録したこのドラマは、少女役の安達祐実を一躍全国区のスターにした。街では、それまで数字の 語呂合わせが中心だったポケベルに、カタカナやひらがなが打てる新機種が登場し始め、女子高生たちの 間で一気に広まっていく。当時「三種の神器」と呼ばれたのは、ポケベルと、じわじわ丈が短くなっていく ルーズソックス。写真がその場でシールになる「プリント倶楽部(プリクラ)」の登場は、 まだ翌1995年のことだ。

本屋・コンビニの棚では、静かな世代交代が始まっていた。『週刊少年ジャンプ』19号(4月発売)から、 時代劇を題材にした『るろうに剣心』の連載がスタートする。「時代劇はジャンプで売れない」と 当初は危ぶまれながらの連載開始だったが、のちに看板作品のひとつに育っていった。同じ誌面では 『SLAM DUNK』『ドラゴンボール』『幽☆遊☆白書』もまだ同時に連載中——いま振り返れば奇跡のような 一冊だった。

1994年の懐かしいCM集のサムネイル

1994年の懐かしいCM集 ── その年に実際に流れていたテレビCMをまとめたアーカイブ映像。当時の商品・ファッション・街の空気感がそのまま残っている。

動画はYouTubeの公開プレイヤーをそのまま埋め込んでいます。

第六章

次世代機、十一日の攻防

パチンコ・パチスロの外側、家庭用ゲーム機の世界でも、この年は特別な年になった。 11月22日、セガがセガサターンを44,800円で発売する。発売初日だけで約20万台を 売り上げるという、当時としては異例の滑り出しだった。その11日後の12月3日、 ソニー・コンピュータエンタテインメントが初代プレイステーションを39,800円で発売。 初回出荷分の1万台は、発売当日のうちに完売している。

この2つの発売日の差は、わずか11日。のちに“次世代機戦争”と呼ばれる激しい競争の号砲は、 この年の暮れにすでに鳴らされていた。どちらが勝つのか、まだ誰にも分からなかった—— 決着に向かうのは、この先1年、2年をかけての話になる。

プレイステーション CM集のサムネイル

プレイステーション CM集 1994〜1995年 ── 発売当時に実際に流れていたテレビCMをまとめた映像。

セガサターン CM集のサムネイル

セガサターン CM集 1994〜1995年 ── 同じく発売当時のテレビCM映像。

動画はYouTubeの公開プレイヤーをそのまま埋め込んでいます。

第七章

数字で見る1994

39,800円プレイステーション本体価格(12月3日発売)。初回出荷1万台は発売当日に完売した
44,800円セガサターン本体価格(11月22日発売)。発売初日だけで約20万台を売り上げた
約46万台『CR黄門ちゃま2』の全国設置台数。確変フルスペックの元祖として大ヒットした
202.1万枚「恋しさとせつなさと心強さと」(篠原涼子 with t.komuro)の売上枚数。女性ソロ初の200万枚超えを記録した
193.6万枚「innocent world」(Mr.Children)の売上枚数。この年の日本レコード大賞も受賞した
23機種この年に記録として残っているパチンコ・パチスロの数
4円貸玉料金。1979年から据え置きで、この頃も変わらない
37.2%ドラマ『家なき子』の最高視聴率。安達祐実の「同情するならカネをくれ」が話題になった
1994年6月27日松本サリン事件
第八章

あなたの1994年

この年、あなたはどこで何をしていましたか。

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